Utricularia dimorphantha Makino

フサタヌキモ

2014 年 8 月

平地のため池や湖沼につながる内湖などの浅瀬に浮遊する根のない多年草です。水中葉は毛状様に細かく分かれ、そこに小さな捕虫囊をわずかしかつけません。しかし、生育初期の段階はノタヌキモ(Utricularia aurea Lour.)と見間違えるほど捕虫囊をつけたり、生育が悪くなった個体も多くの捕虫囊をつけるようになります。日本に自生するタヌキモ類は、冬季に殖芽を形成するか、しないかで分けることができ、前者はタヌキモ(Utricularia × japonica Makino)・イヌタヌキモ(Utricularia tenuicaulis Miki)・ヒメタヌキモ(Utricularia multispinosa (Miki) miki)・コタヌキモ(Utricularia intermedia Heyne)でおおよそ寒地性、後者はノタヌキモ・イトタヌキモ(Utricularia exoleta R.Br.)の暖地性ですが、フサタヌキモは殖芽の形態から見るとちょうど中間に位置すると考えます。栽培による観察では生育環境の違いから殖芽の形成が多少変化することです。冬季に陽光を十分に受け、寒風をさえぎるような比較的暖かいところでは徒長した殖芽になり、ノタヌキモの初冬の成長部に似ています。ノタヌキモは真冬の寒さで枯死しますが、フサタヌキモは他のタヌキモが休眠中の3月から活動を始め、寒さにはきわめて強い種と思われます。殖芽を作るタイプは温度差等の環境の変化においても殖芽形態が変わることはないようなのでフサタヌキモは特異な種と考えられます。花はほとんどつけず、有性繁殖はもっぱら閉鎖花で行うものと思われます。日本固有種で分布域は本州の近畿地方を中心に、北陸、東北地方にも記録されていますが、多くの産地で絶滅したり、絶滅寸前であるといわれています。兵庫県でも唯一加古川市の産地が絶滅しましたが、栽培による系統保存が進められています。兵庫県版レッドデータブック2010のAランク、近畿版レッドデータブック2001のAランク、日本の絶滅のおそれのある野生生物第4次レッドリストはENランクに位置する全国的に危機的状況の種類で、早急な保護を要します。